金・砂張など
印鏧〔引鏧〕(いんきん)、経鏧(きょうきん)・経鏧台、平鏧(ひらきん)・平鏧台、沙羅(さわり)・砂張(さはり)、路念仏の鈴(じねんぶつのれい)、小鏧、大鏧・大鏧台、撥、布団、雲輪、金襴輪(きんらんわ)、饒(にょう)〔銅鑼(どら)〕、鈸(はち)〔饒鈸(にょうはち)〕、鳴り物用袋を掲載しています。
金属製梵音具
大梵天王や如来の発する清浄で妙なる声を「梵音(ぼんのん)」といい、その声を聞いた人は悟りを得ると言われています。「梵音」を具現化する仏具が梵音具と言えます。梵音具は「打ち物(うちもの)」や「鳴り物」とも呼ばれ、互いを打ち合わせたり、打棒で叩いて音を出します。
梵音具には銅や銅合金である真鍮および佐波理(さはり)を素材として、鍛造や鋳造で形成したものがあります。
銅製梵音具
銅を素材とした梵音具で、浄土真宗が使用するものに、饒(にょう)〔銅鑼(どら)〕と鈸(はち)〔饒鈸(にょうはち)〕があります。
饒は銅を打ち延ばして形作り撥で叩く打楽器の一種で、元来中国で軍隊の合図用に用いられ、行軍中には盥(たらい)や鍋として使われたようです。禅宗によって日本に移入され、古い遺物は室町時代にまで遡り、近世では茶会の合図にも用いられました。真鍮で作られる場合もあります。
鈸は、シンバルのような形状をした2枚の銅板を打ち合わせて使用する打楽器の一種です。鈸はすり合わせて音を出す仏教宗派と打ち合わせて音を出す仏教宗派があり、前者は日蓮宗で行われ、後者は浄土真宗が当てはまります。
真鍮製梵音具
真鍮製の梵音具には、鏧(きん)が挙げられ、鏧は「金子(きんす)」と書くこともあります。本願寺派では「大鏧(だいきん)」、大谷派では「経鏧(きょうきん)」と呼び、本山阿弥陀堂で使用される読経の前後や中間で打ち鳴らす仏具です。大谷派では、外陣で用いる経鏧の1/3程度の高さの平鏧という梵音具もあり、朝夕のお詣りや重要法要でも使用する汎用性の高い仏具があります。
鏧は禅宗寺院に用いられていた法具の一種で、真鍮板を槌で打ち延ばして形成します。口の部分を少し厚く、底や側面は長い余韻を保つため薄くしているので、側面の低い位置を撥の角で叩いたり、落下させるとひび割れの原因となります。
佐波理製梵音具
佐波理という銅と錫の合金は「響銅(きょうどう)」の異名が示す通り、叩くと非常に心地よい響きをする金属で、印鏧〔引鏧〕や小鏧、沙羅〔砂張〕に形成されます。
本山御影堂の内陣には、本願寺派は沙羅と表記し、大谷派は砂張と表記する同一のものが設置されます。また、本願寺派では小鏧を設置する場合があり、小鏧は声明(しょうみょう)の調子である「壱越(いちこつ)」調と「平調(ひょうじょう)」調に調律しています。
梵音具の台
古来鏧は礼盤の畳の上に置かれていましたが、外陣に降ろされると旧来の作法を保つため礼盤型の台が設けられました。
本願寺派は丸型もしくは六角型の鏧台を設け、布団を敷いた上に大鏧を乗せ、白革巻きの撥で打ち叩きます。大谷派では、方形または長方形の台に金襴を巻いた輪を乗せて経鏧を設置します。平鏧を乗せる場合は、雲彫りを施した木製の雲輪に金襴輪を設置し平鏧を乗せ、金襴巻の撥で打ちならします。
大谷派用の経鏧台・平鏧台には、正方形で側面の刳型〔繰型〕(くりかた)が猪の目型(いのめがた)または壺繰型(つぼくりがた)につくったものと、長方形の後平型(ごひらがた)があります。
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